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  • 卵巣機能抑制療法 その3

    2008年4月1日

     卵巣機能抑制療法には、ゾラデックス、リュープリンの注射があると言いましたが、ザンクトガレン2007の乳癌国際会議では、卵巣機能抑制療法として腹腔鏡下卵巣摘除術を支持する先生が76.3%いました。

     日本では、まだまだ卵巣摘出術を選ぶ人が少ないですが、選択肢としては間違っていないと思います。なぜなら、お値段を比較してみると・・

     ゾラデックス(3.6mg)  月一回 49,734円
     リュープリン(3.75mg)  3ヶ月に一回 91,680円
     腹腔鏡下卵巣摘除術  12万から18万円(日本ではまだ乳癌の予防の手術は認められていないので術式によって値段が異なります。)+入院費用
     
    以上のお値段の3割負担ということに一般的にはなりますから。

     また、腹腔鏡手術は傷も小さくて済みますし、卵巣の手術であれば入院も短期間ですむと思います。

     患者さんそれぞれのご希望にできるだけ合わせて、医師は治療法を選んでさしあげるべきだと思いますので、みなさんもどんどん医者に質問をぶつけてください。

     そして、本当に真剣に自分のことを考えて、答えを導いてくれる先生をみつけましょうね。
     
     てまりさん、コメントをいつもありがとうございます。その選択肢は正しかったと思います。これからもずっと応援していますからね。
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    卵巣機能抑制療法 その2

    2008年3月31日

     今日は、閉経前ホルモン感受性早期乳癌に対する抗癌剤治療のあとに、卵巣機能抑制療法をおこなうと、予後が改善される可能性が高いというお話です。現在日本では、卵巣機能抑制療法として薬物療法であるゴセレリン投与が行われています。

     臨床試験 INT0101では
     「リンパ節転移陽性患者に対する、CAF6サイクルとCAF後5年ゴセレリンと、CAF後5年ゴセレリン+タモキシフェン5年の比較試験において、40歳未満でゴセレリン投与にて無再発生存率が改善されました。」

     IBCSG Ⅷでは、
     「リンパ節転移陰性患者にたいし、ゴセレリン2年投与とCMF群、CMF後18ヶ月ゴセレリン投与群の比較試験では、39歳以下でCMF後18ヶ月ゴセレリン投与群で無再発生存率がすぐれている傾向にあった。」

     以上の内容より、化学療法後に卵巣機能抑制療法をおこなうことにより予後が改善される可能性が高いと判断されています。

     卵巣機能抑制療法のお注射は、針の太めのゾラデックスと細めのリュープリンがあります。

     実際に、このような臨床試験で実績をだしているのは、ゾラデックスなのですが針が太いので、患者さんの心理的な負担が強いのが弱点です。

     リュープリンとゾラデックス、どちらを選ばれるかは患者さんの自由ですよ。
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    ホルモン療法と化学療法

    2008年3月28日

     今日は、閉経前ホルモン感受性早期乳癌に対するホルモン療法(LH-RH アナログ±タモキシフェン)と抗癌剤治療(CMF,AC,FEC,FAC)の予後(寿命)に大きな差はない可能性がある、というお話です。

     まず、卵巣機能抑制療法と抗癌剤治療であるCMFの直接比較の試験結果では、いずれも予後に大きな差はありませんでした。

     次に、LH-RHアナログ+タモキシフェンの併用療法は、CMF,FAC/FECと少なくとも同等で、LH-RHアナログであるゴセレリン3年間+タモキシフェン5年間と抗癌剤治療であるCMF療法6サイクルを比較すると、Disease Free Survival(無病生存期間),Overall Survival(全生存期間)に差はありませんでした。

     以上、卵巣機能抑制療法±タモキシフェン治療は、ホルモン感受性乳癌に対しては少なくともCMFと同等というデータのお話でした。

     この内容は乳癌治療ガイドライン2007に、記載している内容を引用させていただきました。

     ただし、CMF療法は私たちの施設でも現在は行っておらず、CMF慮法と同等あるいは、生存率に関してはより良好であるという報告のある、アンスロサイクリン系を含む化学療法が、今日各施設では行われています。

     ですから、詳しくは主治医の先生にもご相談ください。常に、医療の世界は新しい情報が更新されていきますのでね。
     
     サクラがかなり満開ですね。今日は神奈川は、あいにくの雨模様ですが、美しいサクラたちは、がんばって咲き誇っています。

     一瞬の美しさのために、長い間準備をしてきたサクラたちに、なんだか感動してしまいます。

     わたしたちは、常に全力で生きていかなければいけないと、強くこころに思いました。
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    卵巣機能抑制療法

    2008年3月27日

    ちょっと難しいタイトルですね。

    今日は、閉経前早期乳癌にたいする卵巣機能抑制療法が予後(寿命)を改善する、というお話です。

     もともと乳癌の増殖は、女性ホルモンであるエストロゲンが関与しています。そこで、このエストロゲンをつくる卵巣の働きを抑えることによって乳癌の増殖を止めることが考えられました。

     その方法としては、薬物療法や卵巣摘出術、放射線照射が行われてきました。研究の結果では、エストロゲンレセプター陽性あるいは不明の乳癌において、卵巣機能抑制により無治療の乳癌と比較して、15年経過時点で再発の絶対値で4.3%低下(51.6% vs 47.3%,有意差あり)、乳癌死亡が3.2%低下(43.5% vs 40.3%)と予後の改善経過がみられたと報告されています。
     
     現在は、世界的には卵巣機能抑制のための卵巣摘出術が多く行われていますが、日本ではLH-RHアナログという注射薬剤が使われています。

     みなさんは、手術で卵巣をとるのと、注射を定期的に行っていくのは、どちらがよいでしょうか。

     少しずつまた情報を提供させていただきますね。
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    乳癌の転移・再発後の薬の治療方法

    2008年3月26日


     乳癌は、手術の治療のあとは再発をしっかり防ぐために様々な治療をおこなう必要があります。なぜなら乳癌が一旦転移・再発をすると、治癒が非常に困難だからです。

     転移・再発乳癌は全身病の状態なので、全身に対する治療が原則です。薬物治療は、ホルモン療法から開始しても抗癌剤治療から開始しても生存期間は同等と報告されています。そこで、まずは有害事象の少ないホルモン療法から開始して、後から抗癌剤治療を行うのが原則となっています。そして、このホルモン療法と抗癌剤治療は同時に行うよりも、順次行っていった方が効果が高かったというデータがあります。

     現在、再発した乳癌との闘病されているかたがたくさんいらっしゃいます。私たちはこれからも決してあきらめず、患者さんとご家族、恋人たちのために全力で病気に立ち向かってまいります。

     いつの日か、みんながにっこりできる日を夢見て。
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    術前ホルモン療法について

    2008年3月21日

     術前ホルモン療法についてのご質問が時々ありますので、まとめてみました。

     閉経後のホルモン感受性原発性乳癌に対する術前ホルモン療法は、乳房温存率は改善させるというデータがあります。

     しかし、術後ホルモン療法と術前ホルモン療法の予後(寿命)を比較した臨床試験はありません。また、再発のリスクが高い場合には、たとえ術前ホルモン療法が奏効したとしても、化学療法を省略できる保証はありません。

     以上より、術前ホルモン療法は確立された治療法とは言えず、日常診療において推奨はされません。

     また、閉経前の乳癌に関する術前ホルモン療法の有効性に関する調査は、まだ見受けられません。

     今後は、以上の内容をよく考えた上で、術前のホルモン療法を選択されるかどうかお決めいただくのが正しいかと思います。

     今日は神奈川は朝から強風で大雨で変な感じでした。こんな日は、いつ何が飛んでくるか分からないので首をすくめて、あちこちきょろきょろしながら歩いてしまいます。最近変なお天気が多いですね。

     体調の変化に十分皆様もお気をつけください。
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    ホルモン療法と骨粗鬆症 その2

    2008年3月19日

    やっと今、長時間のおなかの手術が終わったところです。
    ちょっとお食事をいただいてから、書いています。
    昨日の続きですよね。

    「ところで、骨粗鬆症の治療薬として現在脚光を浴びている“エビスタ”は整形外科では非常に注目されていますが、乳腺外科医の間では要注意の薬と考えられています。」

    “エビスタ“一般名ラロキシフェンは、乳癌のホルモン療法薬であるタモキシフェンと理論的に同様の作用機序と考えられています。そして、実際に大規模臨床試験では浸潤癌においてタモキシフェンと同等の抑制効果がみられています。

    しかし、タモキシフェンとアナストロゾール(アロマターゼ阻害薬)の併用で有害事象(副作用)が増加し、しかもアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが分かっています。

    ですから、注意点はアロマターゼ阻害薬(アリミデックスやアロマシン)を乳癌再発の予防のために内服している方が、骨粗鬆症の予防のために”エビスタ”を内服すると、副作用(更年期症状や血栓症)の可能性が高まり、乳癌再発の予防効果が下がるということです。

    私たち医師は他の科の領域の薬や検査の勉強もしていないと、思わぬ落とし穴があるんだな、ということを改めて考えさせられますね。

    今日は雨が降っています。
    みなさんも雨に濡れてお風邪などひかれませんように。

    それではおやすみなさい。
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    ホルモン療法と骨粗鬆症

    2008年3月18日

    こんばんは。
    今日は閉経後の乳癌術後の患者さんの心配事について少し書きますね。

     閉経後乳癌術後におこなうホルモン療法では、アロマターゼ阻害薬の有効性が報告されており、内服している患者さんたちも増えてきています。

     しかし、その合併症として骨粗鬆症が言われています。すなわち、アロマターゼ阻害薬によって骨密度の低下をきたし、その結果として病的骨折や疼痛などの発症頻度が高くなります。

     この対策としては、年一回の骨密度の測定をおこない、骨密度のT-scoreがマイナス2.0未満の場合にはビスフォスフォネートによる治療を開始するべきとされています。

     ところで、骨粗鬆症の治療薬として現在脚光を浴びている“エビスタ”は整形外科では非常に注目されていますが、乳腺外科医の間では要注意の薬と考えられています。

     この続きは、また明日です。

     今日は、とっても嬉しい気分です。
    なぜなら、はじめてこのブログにコメントをくださった方がいらっしゃったのです。
    てまりさんありがとうございました。

     また、これからも皆さんのお役に立てるような、皆さんに勇気をあげられるような、皆さんを幸せにできるような情報を発信していきたいと思います。

     これからもよろしくお願いいたします。
     
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    ホルモン療法について

    2008年3月17日

    今日は、ホルモン療法ってどういうこと、という内容でお話します。

     乳癌の6-7割は女性ホルモンの影響を受けて増殖します。そこで、女性ホルモンの分泌を低下させたり、その働きをブロックすることで癌細胞の増殖を抑えることができます。

    ホルモンはその受容体と結合して作用するために、この癌組織の中の受容体を調べることによって、乳癌が女性ホルモンの影響を受けているのかを調べることができます。

    分類としては、
    ①高度内分泌反応性: 腫瘍細胞の過半数で、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体が高度に発現している。
    ②不完全内分泌反応性:エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体の発現が低い。または、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体のどちらか一方しか発現していない。
    ③内分泌非反応性: エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体ともに全く発現していない。以上のように分けられます。

     高度内分泌反応性で再発低リスクであれば内分泌療法単独での治療を行います。

    高度内分泌反応性でも再発リスク中間や高度の場合、そして不完全内分泌反応性の場合には、抗癌剤治療を追加することが必要であることが、言われています。

    このように、ホルモン療法ひとつとっても、多くの選択肢があり、答えは一つではありません。

    患者さん一人一人の性格が異なるように、癌細胞の特徴も様々です、いろいろな状況に合わせて、私たちはそれぞれの患者さんに必要な治療をおこなっています。

    外来では、患者さんひとりひとりのご職業や、住んでいる環境、飼っているわんちゃんまですべての情報をお聞かせいただき、患者様ごとにふさわしい治療を行ってまいります。

    だから何でもお話してくださいね。

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    術前ホルモン療法について

    2008年2月19日

    乳癌診療ガイドラインでは、
    閉経後ホルモン感受性原発性乳癌に対し術前ホルモン療法を行うことで乳房温存率は改善する。

    しかし、術後ホルモン療法と予後を比較した臨床試験はない。

    また、再発リスクが高い場合、たとえ術前ホルモン療法が奏効したとしても、化学療法を省略できるという保証はない。

    したがって、術前ホルモン療法は確立された治療法とは言えず、日常診療において推奨はされない。

    となっています。

    ”乳癌の臨床 vol.22 No.6 2007″において、名古屋市立大学乳腺内分泌外科 遠藤 友美先生の論文が載っています。


    86歳の女性の左乳房の乳頭直下の1.5×1.2cmのscirrhous carcinomaにたいし術前にアロマシン 1T(25mg)/dayを投与し20週後にほぼ消失した症例の経験である。

    このように術前ホルモン療法が有用な場合もあるので、今後も患者さんたちと相談しながら、方針を決めていきたいと思う。
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